これ、英語でなんて言う?~“英語らしい英語”に迫る日常表現のツボ~


講師:高橋 基治 氏

サンフランシスコ大学大学院修士課程終了。現在、東洋英和女学院大学教授。専門は英語教育、第二言語習得で、受講生のやる気を最大限引き出す熱い講義は大人気。また国際ビジネスの経験から、ビジネス英語・実用英語にも精通。英語バイリンガルナレーターの仕事にも取り組み、通訳案内業国家資格保持。国連公用語英語検定試験アドバイザー。講演やセミナー、記事執筆にも活躍中で、著書も多数。


講師メッセージ:

英語で話したり書いたりする時、つい「日本語→英語」の直訳をしたくなりますが、対応する単語・表現がわからなかったりした時は困ります。そんな難しいことをしなくとも、発想の方法をちょっと変えるだけで、簡単な単語を使って、英語らしい自然な表現を作ることができるのです。先ず、①なぜなかなか日本では英語が使えるようにならないのか、②実際に英語圏で使用されている言葉の実態とは、といった事をお話しします。次いで、 私が現実に見聞きして集めた表現を、クイズ形式で考えながら、英語的な発想のツボをご紹介していきます。頭の中に眠っている中学校レベルの単語を呼び覚まし、使い切れるようになるお手伝いができればと思います。

講演要旨:

○英語への“接触時間”の認識

外国語の会話能力と研修時間の関係についての研究結果(アメリカ人が日本語を集中的に学習)によると、日常生活で不自由なく使えるレベルになるためには、概ね2,000時間の“接触時間”が必要であった。一方、殆どの日本人の英語への“接触時間”は、中学・高校における英語の授業時間の通算1,100時間、さらに集中できる正味時間数は数百時間と、ごく少ないのが実態。英語を母語としない我々にとって、英語を使いこなしたいという“不自然な願望”を達成するには、それなりに“不自然なこと”をしなければならない。


○日常会話の英語の実態

日常英会話に出てくる単語の統計分析によると、使う頻度が最も高い動詞は、have、get、do、goといった“基本動詞”。日常会話の80%が中学校で習う英単語でカバーでき、高校までの英単語なら90%カバーできる。ただ、これら基本動詞は、状況によって意味が変わる多義語でもあるところに難しさがある。「知っている単語が使い切れていない」ということであり、日常会話の能力を上げるには“基本動詞”の上手な使い方が鍵になる。


○スピーキングのプロセス=文法の重要さ

スピーキングのプロセスは、(1)概念化(何を言いたいか)、(2)語彙(単語・表現)、(3)文法(意味の通じる組立て)、(4)音声化(声に出す)、となる。英語を母語としない我々は、文法を学ぶことが必須である。文法を学ぶことで、表現を分析的に理解すれば、状況に応じた英語表現が組み立てられる。会話で使える文法を目指すなら、文法を公式としてではなく、“何故”という切り口から“分析的に納得すること”が大切である。


○活きた日常会話の実態=言葉の経済性

日常会話では“文”を話さず、意味のある単語3~4語をつなげる最小限の単位でやりとりし、状況から分かることは言わない。文を話そうとすると間が乱れる。


○英語的発想・ものの見方による表現=英語は“状況”ありき

英語表現は“状況”が大切。状況を無視して覚えた文は、実際に使えないし不自然な使い方にもなる。状況と意味を感じ取るようにすれば、基本単語と持ち合わせながら眠っている表現の活きた使い方が分かる。“英語的発想・ものの見方”による表現にアンテナを立てておき、これはと思った表現を実際に使ってみるのが良い。そうした表現を使って通じたときの快感が、更なる学習の励みとなる。


○第二言語習得の理論から=インプットとアウトプット

我々の英語は、大量のインプット(学習・納得)と少量のアウトプット(使う)により習得が進む。インプットだけでは忘れてしまうので、学習後に実際に使ってみることが大切。使う状況を自分で作って、英語で言ってみるのがコツ。


○実践問題による発想転換の練習


*講義と実践演習では、講師が現地で採集した“英語らしい英語”の実例が豊富に引用された。これらは講師の著書(「これ、英語でなんて言う?」中経出版刊、ほか)でも紹介されているので参照されたい。(事業企画部会 佐藤廣重)

会場風景
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