ゲスト: クリスタル・ブルネリさん(東京女学館中学校・高等学校国際学級教諭)
倉岡 正高さん (ボストン大学教育大学院博士課程)
日 時:平成16年3月13日(土) 18:00〜20:30
場 所:横浜市青葉国際交流ラウンジ
参加者: 42名
子供1名 世話人13名
現在青葉区に在住のクリスタル・ブルネリ、倉岡正高夫妻は大学生の頃からボランティア活動を始めており、ボランティアはいつでも、どこでも始められ、地域への貢献は自分の中にバランスをつくり、そのバランス感覚が仕事にもよい影響を与え、ボランティアによって個人の社会的資本を増やすことが地域全体の社会的資本の強化に繋がり、結果的にそこで育つ自分の子供達にとって住みやすいまちづくりになるとのことでした。お二人は日本とアメリカのコミュニティーに暮らし、今の日本社会を見た場合、地域や家族の価値観が薄れてきている中でボランティアが補う活力が地域社会では必要だと話されました。
始め参加者に「良い市民のイメージとは?」何を持っているのかを描いてもらい、会場の壁に展示。ティーブレイク時にお互いの絵が見られるようにしました。トークはクリスタルさんと正高さんがパソコンからお話に関連する映像をスクリーンに映し、映像を見ながらのものでした。
クリスタルさんの青葉区での初めてのボランティアは、特別養護老人ホーム「緑の郷」で3年間英会話を教えたことでした。そこで活き活きしているおじいちゃん、おばあちゃんたちの笑顔を見ることが毎週の楽しみになっていました。
クリスタルさんのボランティアの原点はボストンで大学生活を送っていた時、NPO団体「エリス」との出会いで、4年間ボストンの恵まれな黒人、プエルトリコ、中国等からの移民の子供達に学童保育のような形で、最初は週1回、夏は毎日、学校(ウェズリー)からボストンまで車で30分の距離を通いました。このことが初めての異文化体験で、大学3年の時、京都に留学することになり、そこで知合った子供達に「エリス」の子供たちへ手紙を送ってもらう橋渡しをしました。中国人移民の女の子との出会いも「エリス」がきっかけで、その子が小学校1年の時、クリスタルさんは大学1年生。日本から帰国した時には4年生になっていました。日常会話以上自信の無い両親に頼まれて家庭教師を引き受け、謝礼は少なかったけれど勉強のあとで本格的なベトナム風中華料理のご馳走をいただけました。大学卒業後再来日。中国人の女の子は中学校で日本語を習い、その時勤務していた桐蔭の生徒とのペンパルになっていました。現在もクリスタルさんは日本の学校で英語を教えていますがボランティアで培ったものを仕事にも活かされています。
次に正高さんのボランティアの原点は、ボーイスカウトであった経験からかなりボランティア的な活動はしていらしたものの、重油ボランティアと自治会だそうです。大学卒業後会社勤めをしていらした時、日本海でロシア船籍タンカー座礁による重油漏れがあり、テレビ番組でボランティア達が活動しているのを見て、毎週末3ヶ月間横浜から出る夜行バスで石川県まで出掛けられたそうです。そこでは様々なボランティアがあり、何万人かが参加し、そこからいろいろな人達との繋がりが生れ、ボランティアの面白さも学ばれました。その後、会社を辞めて、アメリカで地域社会教育を学びながら、地元小学校のアフタースク−ルプログラム(放課後を利用した学習活動)でのボランティアや異世代交流プログラム(年寄りが学校へ行って授業の中で生徒をサポートするもの)等のボランティア活動を通して世界が広がり、いろいろな活動が地域を支え、地域との繋がりを感じるようになったとのことでした。
ボランティア活動はボランティアを必要としているところへの貢献はもとより自分つくりにも役立っていること。また地域社会、まちづくりにも繋がるという意味で「まちづくりと社会的資本」について、ロバート・パットナムの理論を紹介して下さいました。人には三つの資本、物質的資本、人的資本、社会的資本があり、物質的資本にはお金や家やあらゆる物、人的資本は知識、技術、そして社会的資本は社会的繋がりのようなもの、例えば、いろいろなボランティア活動を通して、その人が培っていくネットワークのようなもので、その繋がりによって出来る結束、絆というようなものが資産として自分のものになるとのことです。近代の社会制度や教育の中では物質資本と人的資本を理解するのは難しいことではありませんが、この二つだけでは何か足りないというのが周知の事実です。社会的資本を持った人が多く集まると、コミュニティーとして強い社会的資本を持つようになり、教育水準の向上や犯罪率の低下にもつながるということを科学的にパットナム氏は証明しています。
まとめとして、最初に参加者に描いてもらった良い市民のイメージ絵には、思いやり、優しさ、人の話を聞く、他人を信用する、相互に助け合える、尊敬、信頼し合える、協力し合う、等々...抽象的な言葉が多く描かれていました。これらを持ち合わせた市民が社会的な資本になり、社会的資本で一番大切なのは、人と人との繋がりであり、そしてマナーがまちづくりには重要なことであると話されました。
最後に、「Never doubt that a
small, group of thoughtful, committed citizens can change the world. Indeed, it
is the only thing that ever
has.」(小さな、思いやりのある、献身的な市民のグループに、世界を変えることは出来ないなんて疑ってはならない。なぜなら、それが、世界が変わった唯一の理由だから)という文化人類学者マーガレット・ミードの言葉でお話を結ばれました。
当日の映像:ゲストの倉岡夫妻、会場風景、良い市民のイメージ絵
横浜市青葉国際交流ラウンジ・横浜市藤が丘地区センター共催