第88回インターナショナル・トークサロン

守ろう地球、めざそう宇宙*宇宙ステーションの世紀*

ゲスト 菊山 紀彦氏
宙開発事業団招聘研究員
元種子島宇宙センター所長
元筑波宇宙センター所長

  日 時: 2003年9月27日(土)午後2:00〜4:30
  場 所: 青葉国際交流ラウンジ(青葉区役所別館)
  参加者: 36名(内小学生2名) 世話人16名


内容

 トークサロン当日午後にゲストの菊山氏が所長をされていた種子島宇宙センターではH2A6号機の打ち上げを予定しており、氏は打上げを気にしながらのトークサロンでした。終了後今回も打上げは打上げ前に異常が見つかり延期となっていたことがわかりました。

 ゲスト紹介で始まったトークサロン会場スクリーンには2003年1月に打ち上げられ、日本時間2月1日に帰還着陸直前に事故で亡くなったスペースシャトル「コロンビア号」の7人のクルーが映し出されていて、お話が始まる前に参加者全員で黙祷を捧げました。

 2003年は記念の年です。1903年ライト兄弟が人類始めて動力飛行に成功し、66年後の1969年には人類が始めて月面を歩いていました。その時の映像を見ながら、ゲストが人類2度目に月に降り立ったオルドリン飛行士との会見を披露。オルドリンは月の印象を「月って砂と石だけ。そして風が吹かない。風の吹かない死の世界。月着陸船からの空は真っ暗で昼間でも真っ暗。突然そこに美しい世界が見えてきた。それは地球。」と語ったそうです。ライト兄弟から100年後、「コロンビア号」の痛ましい事故がありましたが、今や「宇宙ステーション」の世紀を迎えています。ゲストは多くの映像から日本の宇宙飛行士の活躍、宇宙開発のあゆみ、現在、これからの展望をテンポ良く語って下さいました。

 先ず日本人宇宙飛行士4名の夫々のエピソードを紹介。日本人始めての毛利衛さんは「宇宙では物が落ちない」ことを実感。向井千秋さんは二度目のフライトで36年振りに宇宙飛行した77歳のジョン・グレンさんと一緒で、その飛行中、短歌で上の句「宙返り 何度も出来る 宙返り」と詠み、地上の小学生が下の句「水のまりつき できたらいいな」とやり取りしました。土居隆雄さんは日本人宇宙飛行士として始めて船外活動を行い,その為の宇宙遊泳訓練は地上のプールで足に鉛の重しを着けて水中でしたそうです。若田光一さんは、姿勢制御と通信の機能を持った「Zトラス」と、スペースシャトルがドッキングする為の「PMA−3」装置取り付けを「ロボットアーム」を操作して船外で行い、組みたて作業が完了し、若田さんは日本人として始めて「国際宇宙ステーション」の中に入りました。その時の気持ちを「鉄腕アトムの気持ち」と表現。

 現在、宇宙開発は「国際宇宙ステーション」の時代で、高度400km軌道上に2部屋の居住モジュール、7部屋の実験モジュール、さらに2個の補充モジュールを備えた恒久的な有人宇宙施設を建設しようとするものです。日本は実験モジュールの一つを提供し、2006年に完成すると米、ロシア、欧州、カナダと日本の世界16カ国の中から、7名の宇宙飛行士が6ヶ月毎に交替しながら、10年以上にわたって居住し、様々な実験や観測を行い、日本人宇宙飛行士も毎年一人が滞在します。宇宙ステーション建設は1998年に開始され、若田さんたちの飛行までに既に9室の内3室の組立てが宇宙で行われ、無人で飛行を続けていましたが、その直後、3人の宇宙飛行士がロシアの宇宙船で打ち上げられ、国際宇宙ステーションへの居住を開始し、21世紀を宇宙で迎えました。

 私達が暮らしている地球上では科学・技術が目覚しい発展を遂げた一方で地球環境を急速に破壊しています。毛利さんが2度目の飛行で見たものはエジプトのピラミッドでした。宇宙から見た昼間の地球では人が暮らしているようには見えませんが、夜は明かりが見え、人の暮らしが分かります。宇宙から地球を観測すると環境破壊が想像以上の規模で進んでいることが分かり、南極の上空には南極大陸の2倍の面積のオゾンホールが生れていたり、熱帯雨林の消滅、地球の陸地の三分の一が砂漠化しています。

 アポロ12号のコンラッド船長も、「月では風が吹きません。」とゲストに話したそうです。月と地球の違いは、地球には雨が降り、風が吹き、生命があります。しかし地球に風を吹かせ、雨を降らしてくれる大気層は宇宙から見ると大変薄く、わずか16kmに過ぎません。現代文明はその大気層をも急速に破壊しています。一般人でもお金があり、健康であれば誰でも宇宙へ行かれる時代が近づいていますが、先ず宇宙からは美しく見える私達の住んでいる星、地球をオゾン層の破壊、森林の消滅、砂漠化から守り抜かなくてはならないと本日のゲストはお話を結びました。

尚、10月1日から宇宙開発事業団(NASDA)は宇宙航空研究開発機構(JAXA)に変りました。



トークサロン当日 ゲスト、会場風景、映像、スタッフ等
 スペースシャトル「コロンビア号」クルー 宇宙ステーション(宇宙開発事業団ホームページから)